フローティング・カディスピューパを巻く

ドライフライ-dry flies-

カディスピューパと僕の試行錯誤

👉️動画はこちら:【タイイング】カディスピューパ・パラシュートを巻く

カディスピューパ——つまりトビケラのサナギのことです。
昔読んだ釣り雑誌に、こんな一文がありました。

「ラーバやピューパは、思っている以上に水中で捕食されている事実。」

これを読んだとき、「ほ〜う…それならラーバやピューパパターンも必要になりますなぁ…」と妙に納得。そこから色々と試行錯誤して巻いてきたわけです。

まず最初に取り組んだのは、水中に沈めて使うカディスピューパ(ニンフタイプ)。こちらは以前、動画でも紹介しましたが、釣果は悪くなかったのでしばらく満足して使っていました。
👉️ニンフタイプの動画はこちら:【タイイング】カディスピューパを巻く


フローティング・カディスピューパ誕生のきっかけ

さて、今回ご紹介するのは「フローティング・カディスピューパ」。
…ですが、そもそも最初からこのパターンを巻こうと思ったわけではありません。

きっかけは、定番ニンフ「MSC」のドライフライバージョンを巻きたい!という衝動でした。

「MSCって釣れるよな〜。あんなに釣れるニンフなら、ドライでもいけるっしょ!」

という、なんとも安直な発想です。あの時の僕は、きっと鼻水を垂らし、口を半開きにした呆け顔だったことでしょう。

しかし思い立ったが吉日。すぐさまバイスに向かい、アレコレ思案。
ただ、このパターンを巻くに当たり、一つだけ解決しなければならない課題がありました。


課題:ボディの重さ

ご存知の通り、MSCはラビットファーなど各種ダビング材をふんだんに使用します。
一度水を吸うと、ボディは重くなりがちです。これは当然のこと。

ただ、MSCというパターンの魅力は、大量のダビング材を掻き出して生まれるボリューム感ファジーな質感なまめかしさにあります。この魅力を保ちつつ、軽量化するにはどうすればいいのか…。

水に濡れるとボディが「なまめかしさ」を纏うように…ジューシーな質感です。

解決策:フォーム材の活用

マテリアルボックスを漁った末に辿り着いた答えは「フォーム材」でした。

フックシャンクにフォーム材を巻き、その上からダビングを施す。
フォームは吸水せず、ボリューム感を出しやすい。そして、フォームで形を作る分、ダビング材の量も減らせます。これで重さ問題は解決。


フォーム材を扱う際の注意点

ただし、フォーム材を巻くときは力加減が重要です。

  • 緩く巻きすぎる → 浮力が出すぎ、水面に浮き過ぎる。半沈系としての姿勢が崩れる。強度低下。
  • きつく巻きすぎる → ボリュームが出ず、浮力も失われる。

このパターンに必要なのは、「水面にポッカリ浮かぶほどではないが、沈むほどでもない」という絶妙な浮力です。沈むべきところは沈み、浮くべきところは浮く——そんな姿勢を保てるのが理想です。
ここらへんは動画内でもお話した通りです。

そして偶然生まれた「フローティング・カディスピューパ」

こうして完成したのは「パラシュートMSC」——のはずだったのですが、眺めているうちに、
「これ…フローティング・カディスピューパとしても使えそうだな…」と思うように。

そんなこんなで誕生したのが、動画でも紹介しているフローティング・カディスピューパです。
もう20年以上前のことになります。月日の流れは本当に早いもので、書いていて少しゾッとしました。


20年間ほぼ変わらない形

このパターンは、初期型から現在まで形状にほとんど変化がありません。
ソラックスにパートリッジフェザーを巻き留めてみたり、ヒカリモノを加えてみたりと、途中で色々な寄り道をしましたが、結局それらはやめました。

現在の仕様は、初期型からほんの少しブラッシュアップした程度で、変更点といえばスイスストローを巻き留めることくらいでしょうか。


どんな時に使うのか?

このパターンが真価を発揮するのは、水面高く浮くフライパターンへの反応が鈍い時です。

特に、カディスがハッチしていてライズは見えるものの、エルクヘアカディスのような典型的カディスパターンには見向きもしない…。そんな時がありますよね。

僕は、そんな状況でこのフローティング・カディスピューパを投入します。(もちろん、マッチザハッチを意識せずにパイロットパターンとしても使用できます。)
水面直下に漂う半沈姿勢と、自然なボリューム感が、警戒心の強い魚にも口を使わせやすいと思っています。
さらに、このパターンはパラシュートスタイルにしているため、CDCを使ったパターンと違って、テンポよく釣り上がるのに向いています。水を吸っても乾かしやすく、扱いやすい点も魅力です。

おわりに

MSCパラシュートを巻こうとして誕生し、20年以上愛用し続けてきたフローティング・カディスピューパ。
フォーム材の特性を活かすことで、軽さとボリューム感の両立ができたこのパターンは、僕にとって「信頼できる相棒」です。

フローティング・ピューパパターンをまだ使ったことがないという方、ぜひ試してみてください。


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